不活性ガスってなに?構成機器や放出方式についてまとめました!

千葉県柏市を中心に関東圏で消防設備点検、防災設備工事を行っている防災通信工業です!



今回はガス系消火設備における不活性ガス消火設備についてご説明させていただきます。


この記事を読んでわかること

・ガス系消火設備の種類

・なぜガスで消火できるのか

・不活性ガス消火設備の放出方式

・不活性ガス消火設備の構成機器



ガスを使った消火設備の概要


ガスを用いた消火設備では、消火薬剤としてガスを使用します。主に以下の2種類のガスが使われます。


1. ハロゲンガス

2. 不活性ガス


それぞれの特徴と種類を簡潔に説明します!


1. ハロゲンガス


ハロゲン化物はフッ素、塩素、臭素などのハロゲン元素を含む化合物で、燃料と酸素の化学反応を抑えることで消火します。


主な種類


• ハロン1301

• HFC-227ea

• HFC-23

• FK-5-1-12(ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン)

• 特殊消防用設備として認可されている安全性の高い薬剤。


廃止されたハロゲンガス


• ハロン1211、ハロン2402

オゾン層破壊の原因となるため生産中止。




2. 不活性ガス


不活性ガスは酸素濃度を低下させることで燃焼を抑制します。オゾン層や地球温暖化への影響がほぼゼロで環境に優しい特徴があります。


主な種類と特徴


1. 二酸化炭素(CO₂)

• 高圧式:液化CO₂を高圧容器で保管。配管や継手に高圧対応が必要(16.5Mpa以上)。

• 低圧式:CO₂を-18℃以下で冷却保管。配管の圧力要件が低くコストが抑えられるが、冷却のランニングコストがかかる。

2. 窒素ガス(IG-100)

• ガス自体が安価でコストが低い。

• 設置条件が厳しく、使用できる環境が限られる。

3. IG-55(アルゴナイト)

• 窒素とアルゴンを50:50で混合。

• 酸素濃度を下げる方式で人体に危険(3分以内に退避が必要)。

4. IG-541(イナージェン)

• 窒素52%、アルゴン40%、CO₂8%の混合ガス。

• アルゴナイトに比べて人体への影響が少ない。


ポイントまとめ


• ハロゲンガスは化学反応の抑制で消火。環境負荷が課題だったが、新しい薬剤が登場。

• 不活性ガスは酸素濃度を下げて消火し、環境に優しいが、一部は人体への影響があるため注意が必要。





そもそもなぜガスで消火できるのか


今回ご紹介する不活性ガス消火設備は、火災時に不活性ガス(二酸化炭素や窒素など)を放出することで火を消す仕組みの設備です。では、なぜガスで消火できるのでしょうか? その前に、まず火が燃える仕組みについて説明します。


火が燃えるためには次の3つの要素が必要です。

1. 燃える物質(可燃物)

2. 火をつける要因(点火源)

3. 燃焼を支える酸素供給


これらは「燃焼の三要素」と呼ばれます。最近では、これに「燃焼の連鎖反応」を加えて「燃焼の四要素」と呼ぶこともあります。この4つの要素のいずれかが欠けると、燃焼は続かず火は消えます。


不活性ガス消火設備は、この原理を利用して火を消します。不活性ガスを火災現場に放出することで酸素濃度を低下させて酸欠状態を作り、燃焼を妨げます。さらに、放出されたガスが周囲の熱を奪う冷却作用も加わり、火災を鎮める仕組みです。たとえば、液化二酸化炭素が気化する際には、気化熱を利用して周囲の温度を下げる効果があります。


この方法の大きな特徴は、酸素の供給を遮断することで消火するため、水や泡、粉末などの消火薬剤を使用する場合のように、火災現場を汚す心配がない点です。ただし、二酸化炭素ガスを使用する設備には注意が必要です。大量の二酸化炭素が放出されると、その場にいる人間が酸欠状態になり、命に関わる危険性があります。このため、二酸化炭素ガスを使う消火設備は、人の出入りが少ない場所、たとえば立体駐車場、電算室、ボイラー室などに設置されることが一般的です。





不活性ガス消火設備の放出方式


不活性ガス消火設備は、二酸化炭素ガスや窒素ガスを放出して消火しますが、放出の仕方には以下の3つの方式があります。


1. 全域放出方式


概要:部屋全体(防護区画内)に消火ガスを放出して消火する方式。

使用可能なガス:二酸化炭素ガス、窒素ガス(IG-55、IG-541含む)

特徴:消火ガスを部屋全体に充満させる必要がある。

ガスが漏れないよう、換気口やダクトをダンパーやシャッターで閉鎖する必要がある。                                                

窒素ガスなどの高圧ガス(約30Mpa)を放出する際は、気圧上昇を抑えるため「避圧口」を設ける。



2. 局所放出方式


概要:防護対象物(特定の機器やエリア)に直接消火ガスを放出して消火する方式。

使用可能なガス:二酸化炭素ガスのみ。

特徴:主にボイラーなど、固定された火気使用機器に使用される。

    対象物だけを重点的に消火するため、効率的。


3. 移動式


概要:定められた場所に設置された消火薬剤貯蔵容器から、ホースやノズルを手動で操作     してガスを放出する方式。

使用可能なガス:二酸化炭素ガスのみ。

特徴: 二酸化炭素消火器の大型版と考えると分かりやすい。

     火災時に煙が充満する恐れのある場所や無窓階には設置できない。


ポイントまとめ


• 全域放出方式:部屋全体を消火。広範囲に適用可能だが、換気対策や避圧口が必要。

• 局所放出方式:特定の機器にのみ放出。二酸化炭素ガス限定。

• 移動式:ホースで操作する手動方式。設置場所に制限あり、二酸化炭素ガス限定。





不活性ガス消火設備の構成機器


不活性ガス消火設備は、火災を効率的に消火するために以下のような機器で構成されています。使用するガスの種類や放出系統の構成により、必要な機器が増減する場合があります。


主な構成機器一覧


1. 消火薬剤貯蔵容器(薬剤ボンベ)

 • 消火に使用するガスを保管する容器。

2. 起動用ガス容器(起動ボンベ)

  • 消火薬剤を放出するために使用するガスを保管する容器。

3. 容器弁開放装置

 • 消火薬剤貯蔵容器の弁を開いてガスを放出する装置。

4. 閉止弁(※二酸化炭素方式のみ)

 • 消火薬剤の流れを制御するための弁。

5. 連結管

 • 容器や配管をつなぐ管。

6. 選択弁(放出系統が複数の場合)

 • 消火ガスをどの系統に放出するか選択するための弁。

7. 消火設備制御盤

 • 全体の動作を制御する中枢装置。

8. 非常電源・配線(主に蓄電池設備)

 • 停電時でも設備を作動させるための電源と配線。

9. 安全装置(安全弁など)

  • 圧力調整や過剰な負荷を防ぐ装置。

10. 噴射ヘッド

  • 消火ガスを放出するための噴射口。

11. 音響警報装置(サイレンや音声警報)

  • 消火ガス放出前に警報を発し、人に避難を促す装置。

 12. 手動起動装置

  • 緊急時に手動でガス放出を起動する装置。

 13. 放出表示灯

  • 消火ガスの放出中であることを知らせる表示灯。

 14. 配管(継手を含む)

  • 消火ガスを各所に供給するための管。

 15. ダンパー及びシャッター(開口部閉鎖装置)

  • 換気口やダクトなどを閉鎖し、ガスが逃げるのを防ぐ装置。

 16. 避圧口(窒素ガス系のみ)

  • 高圧のガス放出時に室内の圧力を調整する装置。

 17. 火災感知器(自動放出方式のみ)

  • 火災を感知し、自動で消火設備を作動させる装置。


ポイントまとめ


• 設備の構成は使用するガスの種類や放出方式に応じて変わる。

• 安全装置や警報装置は、人の安全確保のために欠かせない要素。

• 避圧口や閉鎖装置など、室内環境に適した機器が必要になる場合がある。




防災通信工業ではみなさまの消防設備の予防保全をしっかりサポートするために、自社で消防設備点検や消防設備工事を設計から届け出まで一気通貫で行っておりますので、ぜひお気軽にお問合せください!